根抵当権が付いた不動産の売却の流れとは?売却時の注意点も解説

売却コラム

根抵当権が付いた不動産の売却の流れとは?売却時の注意点も解説

住宅ローンで不動産を購入する際は「抵当権」が設定されますが、「根抵当権」は初めて聞く方も多いかもしれません。
根抵当権が付いた不動産を売却する際は、通常の不動産売却と手続きの流れが異なるため、注意が必要です。
本記事では、根抵当権とはなにか、根抵当権が付いた不動産を売却するときの流れや注意点を解説します。

この記事の執筆者

このブログの担当者 木下 康裕

株式会社キーポイント代表取締役
タワマン・マンション・戸建て・土地・事業用の不動産売却・購入をご担当させて頂きます。不動産経験15年以上、大手不動産会社出身の担当者がワンツーマンでお客様の不動産売却をお手伝いします!!私は一度きりのお取引で終わるのではなく末永くおつきあい頂ける仲介を目指しております。不動産のことなら、お気軽にご相談をお待ちしております。

不動産売却前にチェック!根抵当権の特徴とは?

不動産売却前にチェック!根抵当権の特徴とは?

根抵当権とは、不動産を担保にして、設定された限度額の範囲内でお金を何度も借りたり返したりできる抵当権のことです。
根抵当権は通常、事業を運営する方々によって利用されますが、個人の不動産取引においても活用されることがあります。

根抵当権の特徴

根抵当権には主に以下の4つの特徴があります。

●債権が特定されない
●繰り返し借入可能
●完済しても消失しない
●抹消には債権者の同意が必要


根抵当権では、担保する借金が特定の債務ではない点が特徴的です。
そのため、設定された極度額の範囲内であれば、何度でも借り入れをおこなうことができます。
また、一般的な抵当権と異なり、住宅ローンなどの借金を完済しても根抵当権は消えません。
根抵当権を抹消するには、金融機関などの債権者の同意が必要となります。

抵当権との違い

根抵当権と通常の抵当権の主な違いは、以下のとおりです。
繰り返しの借り入れと返済
抵当権では、特定の不動産を担保にして住宅ローンなどの借金をおこない、その債務を完済すれば抵当権を抹消できる仕組みです。
一方、根抵当権では、設定された上限金額内であれば、何度でも借り入れが可能となります。
たとえば、上限が5,000万円の場合、1,000万円を借りて完済しても根抵当権は消えず、さらに4,000万円まで借り入れが可能です。
随伴性の有無
抵当権の随伴性とは、その担保対象物にかかる債権が他者に移転する際、抵当権も一緒に移転することを意味します。
根抵当権に関しては、元本が確定する前と後で随伴性の扱いが異なります。
元本確定前は、被担保債権が特定されていないため、債権が移転しても根抵当権は新しい第三者には移転しません。
登記の回数
抵当権は、新たに融資を受ける度に登記手続きが必要で、それに伴う登録免許税も発生します。
一方、根抵当権は設定時の一度だけ登記をおこない、融資のたびに登記を更新する必要がなく、登録免許税も1回のみです。
上記の違いを理解することで、根抵当権と抵当権がどのように異なり、どの状況でどちらが有利かを判断するのに役立ちます。

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根抵当権が付いた不動産を売却するときの流れとは?

根抵当権が付いた不動産を売却するときの流れとは?

根抵当権の付いた不動産を売却する際の流れは、以下のとおりです。

①残債務と不動産の査定額の確認

売却手続きの最初のステップとして、残っている債務と不動産の査定額を確認しましょう。
不動産の査定額が残債務よりも低い場合はオーバーローンとなるため、通常の不動産売却はおこなえず、任意売却などの選択肢を検討し、債権者と話し合う必要があります。
査定額が残債務を超えている場合はアンダーローンとなり、売却から得られる代金で債務を完済できます。

②債権者と話し合いをおこなう

抵当権の場合は、完済した段階で抵当権の抹消手続きに進みますが、根抵当権の場合、抹消するためには債権者の同意が必要です。
そのため、債権者との事前の話し合いが必要となります。
根抵当権を抹消することは、金融機関にとって顧客を失うことを意味するため、話し合いは困難になる可能性があります。
根抵当権がある限り、売却手続きを進めることができないので、根気強く、かつ慎重に交渉を進めることが重要です。

③元本確定をおこなう

債権者との交渉がまとまった後、次におこなうのは元本確定の手続きです。
元本確定とは、現時点での債務額を確定させ、これ以上の借り入れを停止することを意味します。
元本確定によって、債務額が確定するため、通常の抵当権と同様の扱いになります。
残った債務を完済すれば、根抵当権を抹消し、不動産の売却手続きに進むことが可能です。
なお、元本確定をおこなうには、以下のような事由が必要です。

●元本確定期日があらかじめ設定されている
●根抵当権者が元本確定を請求した場合
●抵当権設定から3年を経過し、根抵当権設定者が元本確定を請求した場合
●債権者からの消滅請求があった場合
●不動産が差し押さえられた場合


不動産売却において根抵当権を抹消する多くのケースでは、「抵当権設定から3年経過後に根抵当権設定者が元本確定を請求した場合」が該当します。
元本確定の手続きを通じて、不動産売却が可能になります。

④不動産を売りに出す

根抵当権付きの不動産を売却する際の最終ステップは、通常の不動産売却と同じ流れです。
物件を広告に出し、内覧の対応や条件交渉をおこないます。
買主が決まった後は、売買契約を結び、代金決済を済ませ、最終的に不動産の引き渡しをおこなって売却が完了します。
重要なのは、物件の引き渡し前に根抵当権の抹消登記を完了させることです。
根抵当権の抹消登記の手続きは、司法書士に依頼することが一般的です。
手続き完了までには10日から1か月程度かかることがあるため、売却手続きのスケジュールにご注意ください。

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根抵当権の付いた不動産を売却する際の注意点とは?

根抵当権の付いた不動産を売却する際の注意点とは?

根抵当権付きの不動産の売却について、注意すべき点を知っておくことも重要です。

注意点①所有者と債務者が異なる場合のトラブル

根抵当権では、不動産の所有者と債務者が必ずしも同じであるとは限りません。
たとえば、ある方が第三者の不動産を担保として根抵当権を設定している場合があります。
その場合、所有者自身は借金をしていないものの、他人の借金に対する保証を自分の不動産で担っていることになるのです。
根抵当権は、限度額の範囲内で何度でも借り入れができるため、不動産の所有者が気付かない間に債務者が繰り返し借り入れをおこなっている場合、返済が困難になる可能性があります。
いざ、不動産を売却したいと思ったときに、債務者が債務を完済できなければ、根抵当権を抹消できないトラブルが生じます。
このような状況を避けるためにも、不動産の所有者は定期的にその不動産に設定されている債務の状況を確認することが重要です。

注意点②元本を確定した後は元に戻せない

根抵当権に関する重要な注意点として、元本を確定させた後の変更の不可逆性があります。
元本を確定すると、根抵当権は通常の抵当権に変わり、以前のように元に戻すことはできません。
そして、通常の抵当権は債務が完済されると消失します。
とくに、運転資金の調達に根抵当権を利用する事業者にとっては大きな変化です。
たとえば、相続で事業用の不動産を受け継ぎ、その不動産に根抵当権が設定されていた場合、事業を継続するために新たな資金が必要になるかもしれません。
再度の融資が予想される場合には、根抵当権の抹消をおこなうかどうかを慎重に検討する必要があります。
なお、根抵当権が通常の抵当権に変わった後、債務を完済すると法的には抵当権は消失します。
しかし、登記簿上の記録が自動的に抹消されるわけではありません。
債務の完済後も、登記簿には抵当権が記載されたままとなるため、抹消登記をおこなうことで登記簿に反映させる必要があります。

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まとめ

根抵当権の特徴は、債権が特定されない、繰り返し借入可能、完済しても消失しない、抹消には債権者の同意が必要な点の4つです。
不動産売却する際の流れは、残債務と査定額の確認から不動産を売りに出すまで、4ステップあります。
売却時の注意点は、所有者と債務者が異なる場合のトラブルと元本を確定した後は元に戻せない点の2つです。


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