相続における寄与分を請求するのは困難なケースが多い?
これまでは問題がなかった親族関係が、相続をきっかけとしてトラブルに発展するケースは少なくありません。
なかでも「寄与分」は、トラブルの原因になってしまいがちなため、注意が必要です。
そこで今回は、相続で知っておきたい寄与分についてご紹介します。
不動産相続のご予定がある方は、寄与分が認められる要件や特別寄与料とは何かも併せて把握し、ぜひ今後のご参考にしてみてください。
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相続の際に知っておきたい寄与分とは?
まずは、寄与分の概要についてご紹介します。
寄与分とは
そもそも寄与とは、人や社会のために力を尽くすことを意味します。
相続においては、被相続人(亡くなった方)のために貢献することです。
通常の相続では、遺言書がなかった場合を除き、基本的に法律で定められた法定相続分によって遺産を分配します。
しかし、亡くなった方の介護や家業の手伝いなどをおこない、とくに献身的に接してきた方にとっては、法律で決められた割合で遺産が分配されることに納得できない場合もあるでしょう。
寄与分とは、亡くなった方の財産の維持や増加に対して一般的に考えられる親族関係を超えた特別な寄与をおこなった場合に相続分以上の財産を受け取れることです。
このように生前に被相続人に対して何らかの貢献をおこなった方に貢献度に応じて取り分を増やす措置が講じられています。
寄与分は遺産分割協議での話し合いが必要
寄与分を得るためには、遺産分割協議で自ら主張する必要があります。
そして、すべての相続人の合意を得なければなりません。
金額については各々の事情を加味したうえで決定し、これについても合意が必要です。
基本的には遺産分割協議で決着をつけますが、難航するケースもあります。
このような場合は、寄与分を受ける方が家庭裁判所に申立てをおこない、調停によって手続きを進めます。
それでも決まらなければ、最終的には家庭裁判所の審判で寄与分が決定する流れです。
ただし、寄与分は認められないケースがあることを覚えておきましょう。
また、寄与分の金額は相続の割合の変化によって求めるのではなく、たとえばプロの介護士に依頼していた場合に得られたであろう金額や介護に要した時間をもとに算出します。
そのため、寄与分として期待する金額に満たないケースが多いのが現状です。
なお、以前は寄与分に時効はなく、どんなに時が経過していても当時の行為を証明できれば有効だとみなされます。
ただし、2023年4月1日の民法改正により寄与分の請求は、相続発生から10年以内と定められました。
10年を超えると寄与分は考慮されず、通常の法定相続分で分配されるため、注意しましょう。
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相続において寄与分が受け取れる要件
次に、寄与分を得るための要件についてご紹介します。
寄与分の要件
寄与分を得るためには、次の5つの要件を満たす必要があります。
●相続人である
●亡くなった方の財産の維持や増加のために貢献した
●特別の寄与をおこなった
●無償または無償に近い状態で寄与をおこなった
●寄与行為に継続性があった
まず前提として、寄与分は相続人しか主張できません。
そして、日常のほとんどの時間を介護や事業の手伝いなどに費やし、その行為が親族間の扶養義務などの範囲を超えた特別なものとみなされる必要があります。
さらに、行為に対して報酬を受けることなく、一定期間継続しておこなっていなければなりません。
ただし、行為の内容や期間などに明確な定義はないため、先述したように遺産分割協議で検討することになるでしょう。
寄与行為の型
寄与行為は5つの型に分類されます。
どのような行為があるのか、見ていきましょう。
●家業従事型:家業である被相続人の事業に従事した
●金銭出資型:被相続人に対して住宅ローンの返済や家の改修費などの高額な出資をした
●療養看護(介護)型:被相続人の看護や介護をおこなった
●扶養型:被相続人を扶養し、財産を維持した
●財産管理型:被相続人に代わって財産を管理して維持形成をおこなった
先述したように寄与分は、相続の割合を変化させて求めるのではありません。
たとえば、家業従事型では本来もらえるはずの年間給与額などをもとに受け取る金額を計算します。
ほかの型についても同じような形で計算することが多く、上乗せ分として期待するような金額は得られないかもしれません。
最終的に寄与分が認められれば、本来の法定相続分を加算した金額を得る流れです。
このように提供した労働力や財力などを考えると、納得がいかないと感じる方も多いかもしれません。
寄与分を得るのは難しい
ここまでお伝えしたように、寄与分の請求には10年の時効があるほか、すべての要件を満たすのは難しいことがわかります。
認められたとしても希望するような金額は受け取れないかもしれません。
そこで考えたいのが、条件付きの贈与契約である負担付死因贈与契約です。
療養看護(介護)型を例に挙げれば、母が亡くなるまで介護を継続すれば財産の3割を渡すなどの条件を付与できます。
遺言と似ていますが、負担付死因贈与契約では、子の同意がなければ条件の変更ができません。
そのため、遺言書や生前贈与などの対応とは異なり、双方が安心して労働援助や財産配分をおこなえるメリットがあります。
ただし、この契約で不動産を譲渡する場合、登録免許税や不動産取得税が通常より高くなることはデメリットです。
そもそも不動産の相続は、物理的な分配が難しいことから、協議が難航しがちです。
誰かが居住する予定がないのであれば、固定資産税などの維持費や管理の手間も負担になるでしょう。
しかし、売却して換金すれば公平に分配でき、金融資産にすることによって登録免許税や不動産取得税の心配もなくなります。
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相続人以外も寄与分を受け取れる?特別寄与料とは
最後に、特別寄与料についてご紹介します。
特別寄与料とは
特別寄与料とは、簡単に言うと相続人以外の親族が受け取れる寄与分です。
たとえば日本では長男の妻が主に介護を担っているケースが多く、これまでは相続人でない妻は何も受け取れないのが実情でした。
このようなケースをはじめとする相続人以外の寄与行為の救済措置として2019年7月の民法改正から特別寄与料が創設されたのです。
ただし、特別寄与料を主張できるのは、被相続人の親族(6親等内血族と3親等内姻族)のみです。
つまり、内縁の妻や友人、知人は含まれません。
なお、特別寄与料の要件は、寄与分に準じます。
たとえば一般的な同居程度では、特別寄与料を受け取ることはできません。
特別寄与料における注意点
特別寄与料における注意点は、次の3つです。
●認められる寄与行為は、労務の提供のみ
●請求期限は相続の開始および相続人を知ったときから6か月または相続開始のときから1年
●相続税は2割加算
特別寄与料は寄与分と異なり、認められる寄与行為が療養看護その他の労務のみです。
そのため、寄与分で認められる金銭等出資型などは、特別寄与料を受け取れません。
また、請求期限も寄与分より短く、6か月または1年が経過すると請求できなくなります。
さらに、配偶者・子・親以外の親族が遺産を受け取る場合は、相続税が2割加算されるルールがあります。
そのため、特別寄与料を受け取れたとしても通常よりも多くの相続税を支払わなければなりません。
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まとめ
寄与分とは、生前被相続人に貢献した方が受け取れる遺産の上乗せ分です。
特別寄与料も創設され、介護などに貢献してきた長男の妻など、相続人以外に受け取れる範囲は拡大しているものの、要件が厳しいこともあり、活用しきれないケースが多いのが実情です。
そのため、負担付死因贈与契約の利用も考えてみましょう。
負担付死因贈与契約を利用する場合は、登録免許税や不動産取得税が通常より高くなるため、売却による換金も検討することをおすすめします。
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