相続における不動産の共有持分とは?できることや起こりうるトラブルを解説

相続コラム

相続における不動産の共有持分とは?できることや起こりうるトラブルを解説

相続は、円満かつ円滑な遺産分割が求められますが、不動産は現金のように簡単な分割ができません。
そのため、公平性を重視して、共有持分にするケースがよくあります。
今回は、相続における不動産の共有持分とはどのような仕組みで持分者は何ができるのか、そして共有状態で起こりうるトラブルについて解説します。
不動産を相続する予定のある方は、ぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者

このブログの担当者 木下 康裕

株式会社キーポイント代表取締役
タワマン・マンション・戸建て・土地・事業用の不動産売却・購入をご担当させて頂きます。不動産経験15年以上、大手不動産会社出身の担当者がワンツーマンでお客様の不動産売却をお手伝いします!!私は一度きりのお取引で終わるのではなく末永くおつきあい頂ける仲介を目指しております。不動産のことなら、お気軽にご相談をお待ちしております。

相続における不動産の共有持分とは

相続における不動産の共有持分とは

相続が発生すると、不動産が複数の相続人によって共有されるケースがよく見られます。
不動産は、現金のように簡単に分割できないため、遺産分割協議がまとまらない場合、そのまま共有状態になるのが一般的です。
ここでは、共有持分の仕組みや、共有状態が発生する理由、さらにその課題について詳しくみていきましょう。

不動産の共有持分の仕組み

共有持分とは、1つの不動産を複数名で共有する場合、それぞれが持つ所有権の割合を指します。
たとえば、親が残した土地を兄弟3人で相続する場合、各人が3分の1ずつの持ち分を取得します。
この割合は、遺言や相続人の法定相続分によって決められるのが一般的です。
共有持分を持つ方は、それぞれが所有者としての権利を有します。
この仕組みは、財産の公平な分割を目的としています。
その一方で、物件の活用や管理がスムーズに進まなくなるリスクも伴うため、注意が必要です。

なぜ不動産が共有持分の状態になるのか?

遺言書によって資産を引き継ぐ方が明確に指定され、その内容に基づいて遺産分割がおこなわれれば、共有の状態にはなりません。
しかし、遺言書が存在しない場合や、相続人同士で遺産分割協議がまとまらない場合、共有状態になるケースがあります。
不動産は、現金のように簡単に分割できません。
また、不動産の価値は接道状況や方角、隣地の影響などによっても異なります。
そのため、遺産を公平かつ円満に分けるのが難しい場合、問題を先送りする手段として共有持分が用いられます。
共有状態自体は、法的に認められたものですが、共有持分はさまざまな課題もあるため、慎重な判断が必要です。

相続による共有持分がもたらす課題

相続によって共有状態が続くと、さまざまな課題が発生する可能性があります。
よくある課題の一つが、共有者間での意見がまとまらないケースです。
有効活用の方法や処分の売却を相談したくても、スムーズに話がまとまりません。
そして、共有者が増えれば増えるほど、意思決定も複雑です。
また、共有者のなかには速やかに話ができない方や、物件の維持管理に非協力的な方が出てくる場合も想定されます。
このような状況では、物件の適切な運用が難しくなり、場合によっては資産価値が下がるリスクも生じます。

▼この記事も読まれています
相続発生時の遺産分割協議の進め方と起こり得るトラブルについて解説

不動産の共有持分者ができること

不動産の共有持分者ができること

共有持分にすると、公平感が保てるものの、時には不便を感じる場合も少なくありません。
それは、共有者一人の判断でできる行為があったり、一人ではできない行為があったりするためです。
共有物件の維持管理は、共有者全員の合意が必要な場合も多いため、行為の内容によっては注意が必要です。
ここでは、保存行為・管理行為・処分行為の3つに分けて、できることを詳しくみていきましょう。

保存行為

保存行為とは、不動産の価値や状態を保つための基本的な行動です。
たとえば、建物の屋根を修理したり、外壁を補修したりするなどの措置があげられます。
この行為は、他の共有者の同意を得る必要がなく、共有者の一人が単独で判断できます。
適切な保存行為は、トラブルを未然に防ぎ、不動産の価値を維持するために欠かせません。
管理不足が原因で資産価値が低下すると、将来的な売却や利用に影響を及ぼす可能性があります。
共有者が一人でできる行為のため、物件の状態を常に把握し、速やかに対処するのが重要です。

管理行為

管理行為とは、不動産の性質・形状を変えない軽微な変更や、短期間の賃貸借契約などの行為を指します。
管理行為は、共有者の過半数の同意が必要です。
たとえば、3人で同じ割合で共有している場合は、2人の同意があれば問題なくできます。
過半数の基準は、人単位ではなく、持分単位で決まる点に注意が必要です。
1人が60%で2人が20%ずつの共有割合の場合、60%を持つ共有者の同意を得なければなりません。
過半数の同意が取れない場合、思うような行為ができずにトラブルとなる可能性もあるため、注意が必要です。

処分行為

処分行為とは、権利の変更を伴うもので、物件を売却したり担保に入れたりするなどの行動があげられます。
各共有者の持分に関しては、所有者が一人で自由に処分ができます。
しかし、共有不動産全体に対しての処分行為は、重大な行為として共有者全員の同意が必要です。
物件を売却したくても、同意が得られないために、売却が進まないケースも少なくありません。
将来の売却が考えられる場合、遺産分割協議の段階でしっかりと話し合い、全員の意向を確認するのが重要です。

▼この記事も読まれています
相続した不動産が未登記だった際の相続方法やデメリットついて解説

相続した共有不動産で起こりうるトラブル

相続した共有不動産で起こりうるトラブル

共有状態は、相続が進むにつれて、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
相続人が増えるたびに、共有持分者が増加し、共有者同士の意思疎通が図れなくなるケースが少なくありません。
ここでは、どのようなトラブルが発生する可能性があるのか、そしてどのように対処すべきかをみていきましょう。

相続のたびに共有持分者が増えてしまう

相続が繰り返されるたびに、共有持分者が増えてしまう可能性があります。
最初は兄弟姉妹だけで共有していた物件が、その子どもたちや孫たちまでが相続する状態となります。
このような状態になると、共有者同士の意見がまとまりにくく、維持管理や売却の意思決定がスムーズにできません。
そして、相続登記が未了のままであると共有者の人数が過剰に増え、いわゆる「メガ共有」と呼ばれる状態になる場合もあります。
このような事態を避けるには、共有状態で起こりうるトラブルを把握し、早い段階での共有持分解消の方法を検討するのが重要です。

共有者と連絡がとれなくなってしまう

共有不動産は、持分者の一人だけの意思決定ではできない行為があります。
適切に維持管理していくには、共有持分者とスムーズに連絡が取れる状態でなければなりません。
しかし、時間が経過すると、持分者の一人が転居したり行方がわからなくなったりする場合が発生します。
円滑なコミュニケーションが難しくなると、物件の適切な維持管理に支障をきたします。
たとえば、経年劣化による建物の大規模な修繕が必要になったとしても、対応ができません。
このような状況を防ぐためには、定期的に共有者間で情報を共有する仕組みを作っておく必要があります。

共有物分割請求されてしまう

共有不動産では、共有者間で意見が一致しない場合、共有者の一人に共有物分割請求される可能性があります。
共有物分割請求とは、その名のとおり、各共有者がいつでも共有物の分割を請求できる権利です。
裁判によって物理的に分割するか、売却して現金で分けるかを決めます。
裁判所になると、時間と費用がかかるのが一般的です。
このような事態を避けるためには、事前に共有者同士で話し合い、合意を形成しておく必要があります。

▼この記事も読まれています
数次相続とは?不動産の相続前に知っておきたい注意点をご紹介

まとめ

相続による不動産の共有持分は、公平に遺産を分割するための仕組みです。
共有者が増えれば、意思の疎通が難しくなり、物件の維持管理や活用に支障をきたします。
共有状態でできることやリスクを理解し、円満かつ円滑な相続手続きをしましょう。


”相続コラム”おすすめ記事

  • マイホーム住み替えのダブルローンとは?利用条件やメリットをご紹介の画像

    マイホーム住み替えのダブルローンとは?利用条件やメリットをご紹介

    相続コラム

  • 離婚後も家に住み続けるメリットはある?産分与についても解説!の画像

    離婚後も家に住み続けるメリットはある?産分与についても解説!

    相続コラム

  • 相続における代償分割とは?メリットについて解説の画像

    相続における代償分割とは?メリットについて解説

    相続コラム

  • 相続した不動産を売却する流れとは?相続にかかる税金や注意点をご紹介の画像

    相続した不動産を売却する流れとは?相続にかかる税金や注意点をご紹介

    相続コラム

  • 代襲相続とは?代襲相続が発生するケースや代襲相続人の範囲について解説の画像

    代襲相続とは?代襲相続が発生するケースや代襲相続人の範囲について解説

    相続コラム

  • マンションの相続税評価額はどう計算する?土地と建物に分けて解説!の画像

    マンションの相続税評価額はどう計算する?土地と建物に分けて解説!

    相続コラム

もっと見る